五年前のこの季節に亡くなった父の存命中、僕と父は薄い関係だとずっと思っていた。みまかった後になって、自分の中の父の大きさに気づき動揺した。
去年の同じ季節に、父の死を想っていくつか歌を作った。いつか消える想いを紙に留めることにも意味はあると信じつつ:
父の逝きし秋は来にけり、涼やかに彼の日と同じ青き空して
処置室の窓より射し入る秋の陽の明るき中で父は逝きけり
苦しみの意味はありしか、延命を父に強ひしは我の甘えか
逝く父と、少女のごとく泣きし母の、想いを我は知らずてありき
秋空の透き通りたる青さかな