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消費税で所得再配分を

前から言っているのだけど、僕は、消費税の率を20%ぐらいに上げて、上げた税率分の税収を国民一人当たり均等に給付すればよいと思っている。

誰もが20%負担するのだから高額所得者にとっても公平な税制。とはいえ、実際問題として高額所得者は消費額も多いので支払う消費税額も多い。それを一人当たり均等に給付すれば、所得再配分ができる。かつ、子供の多い家庭ほど、給付額が多くなる。

一人当たり均等に再配分すれば、4人家族は消費税負担がゼロになる

2023年度ベースで試算してみよう。消費税収は23.9兆円、人口は1億24百万人程度、税率を倍にして税収も倍になるとして、増額分を給付すると1人1年当たり19万円になる。一方で支払う税額はどう変わるか。4人家族の平均消費支出は32.8万円、年間で390万円ちょっとだ。このうち10/110が消費税として、1年に36万円納税している。これが倍になるわけだから納税額は36万円増えるだろう。一方で、この家族は、さきほどの1人1年当たり19万の給付を4人分受けることになるから年間76万円の収入増だ。差引すると年間で40万円の純増になる。かなりの額ではないだろうか。

ちょっとわかりにくかったかもしれない。総額ベースで言うと、現在、平均的な4人家族は1年に36万円の消費税を払っている。税率を20%に上げ、増税額を一人当たり均等に給付すると、この家族が1年に支払う消費税額は72万円、一方で受ける給付が76万円。この家族にとって、消費税負担はマイナス4万円だ。平均所得かそれ以下の庶民にとっては「憎い消費税」ではなく「ありがたい消費税」になる。金持ちは、自分の意思でたくさん消費しているのだからしょうがない。払ってくれ。

消費税を廃止するよりずっといい。廃止したら確かに庶民は消費税を払わなくていいが、金持ちも払わなくていい。だから国家財政は貧乏になる。ここで述べている方法なら国家財政に対する影響は中立的だ。可処分所得に対する消費額の割合が大きい層に再分配で金が渡るから、むしろ、消費が促進され経済に好影響を与えるだろう。

こんなこと、一気呵成にやる必要はない。毎年、1%ずつ、10年間税率を上げていけばよい。歩調を合わせて給付もちょっとずつ増やす。そうすれば、税率を上げる前の駆け込み消費を抑制できる一方で、来年も税率は上がるのだから上げた後の買い控えも起きにくいだろう。財政や経済への影響も評価しやすい。大きな変化ではあるが、小さく始めることが出来る。

消費税は金持ちやインバウンドも逃れられない優れた徴税システムだ

法人税率や所得税率を上げるのは言うは易しで抜け道が色々ある。金持ちや金のある大企業ほどそうした抜け道を使う工夫に金をつぎ込んでも引き合う。

その点、消費税は逃れにくい税だ。所得の増加ほどには消費額は増えないから逆進性があると言われるが、とはいえ、所得が増えれば消費も増えて納税額も増えるから、上記のように工夫すれば、所得再配分になるわけだ。

日本は暮らし良い国だから金持ちも日本に住みたくなる。いまなら20%の税込みでも日本の物価は安い。だから、消費税は高額所得者に被害者感を与えずに税を取る良い方法なんだ。ちなみに、欧州では消費税率は軒並み20%台だ。

所得税相続税が高いと、金持ちはシンガポールとかに移住して税を逃れる。でも、狭いシンガポールで暮らしても飽きるし、物価も高いし、本当は日本に居たいんだ。だったら、所得税相続税は安くして、消費税で払って貰えば、お互い、気持ちいいじゃないか。

それにインバウンドもある。消費税率をゼロにするとインバウンド客は日本で税金を払う必要がない。消費税なら、彼らもたっぷりと払ってくれる。我々が海外に行ったとき「付加価値税(消費税と同じだ)」を払うように。

僕らは、日本を、金持ちが住んで、あるいは金持ちのインバウンドが訪れて、気持ちのいい国、消費したくなる国にしていけばいい。そうすれば、税収がガンガン増え、分配できる。

誰か、やってくれないかな。

【追記】 ちなみに税率を上げると免税事業者に残る「益税」が増えるという問題がある。上乗せした10%は免税しないとすればよい。そうすれば免税事業者だけ得をするということは無くなるし、かといって免税事業者が不利になることもない。