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会計×IT の深層へ

業務システムモデリング練習帳

渡辺幸三さんの新著「業務システムモデリング練習帳」を読んだ。渡辺さんの本はいつも、理論だけでなく具体的なサンプルシステムを示しながら書かれているのが素晴らしい。「リアリティへの執着」は、システム作りの掟の第一だ。

僕としては、第6章の「家計管理システム」がとりわけ気に入った。単純な収支管理システムを作るつもりが、色々なユーザー要件をちゃんと反映していくと、ついには本格的な複式簿記システムに成長してしまうところが楽しめる。「残高口座(=B/S勘定)」と「費目(=P/L勘定)」を別のテーブルとして扱っているのもいい感じだ(両者は発生的には別の概念だったと思うし、僕が提案している増減複式簿記の出発点も、B/S勘定とP/L勘定は違うよね?というところにある)。タイトルどおりモデリングの練習帳としてももちろん読めるが、業務に対する洞察が伝わってくるのが素敵だ。

渡辺さんの提唱されている「三要素分析法」の説明もわかりやすかった。三要素分析法では、個々別々にイベント駆動される「業務単位」を識別した上で、業務単位間の関係は業務フローに、一個の業務単位内での一連の手順はアクションツリーに記述する。一般的な業務フローは、両者を同一レベルで記述しようとするからわかりにくいのだとおっしゃっていると理解した。最近の仕事で、フローチャート型の業務フロー図にがっくりする機会(?)があったので、これには説得された。

渡辺さん、お疲れ様でした。